本書にはアルベルト・ジャコメッティが青年期から晩年にかけて書いた文章、たとえば幼少期や青年時代の回想、アンケートへの回答、自身の芸術や作品について、アンドレ・ドランやジョルジュ・ブラックなどの人物評、ピエール・マティスへの手紙、手帖に書きとめた文章などが収められています。
また、それらに加え、対話が7つ(対話の相手は、ジョルジュ・シャルボニエ、ゴットハルト・イエドリカ博士、矢内原伊作、ピエール・シュネーデル、アンドレ・パリノ、ピエール・デュマイエ、ダヴィッド・シルヴェステル)収録されています。
ジャコメッティは現実を見えるとおりに実現することを志し、その課題が不可能であると感じながらも死ぬまで自己の目標を追求し続けた芸術家ですが、本書を読むと、シュールレアリスムグループへの参加などといった変遷はあるものの、ごく早い段階からそうした願望がジャコメッティに萌していたことがわかります。
たとえば、アンドレ・パリノとの対話では、ジャコメッティは以下のように語っています。
私は全盛期のシュルレアリスムに非常に心を引かれた。その芸術家たちに興味をもったが、実際はシュルレアリスムのグループに属していた期間でもなおこれは一時的な実験だと感じることがよくあった。しかし私はいつかは必ず円椅子にかけたモデルを前にやらねばならなくなるだろうと恐怖をもって思っていた。いずれにしてもそこへゆくにちがいないと感じていた。そして果してそうなった。(中略)何のために目に見えるものを理解しようとこんなに夢中になるのか。かくも頭を描いたり、彫刻したりせずにはおれぬということはどういうことなのか。全く偏執という他はない。(p.416)
本書にはジャコメッティの存命中に発表された文章のすべてと死後に発表された3篇、さらに150ページを超える未発表稿「手帖と紙葉」が収録されており、絵画や彫刻作品だけではなく、文章からもジャコメッティを知りたいという方にとって貴重な一冊になると思います。

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ジャコメッティ|エクリ 単行本 – 1994/7/1
- 本の長さ455ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日1994/7/1
- ISBN-104622043882
- ISBN-13978-4622043881
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
未知という虚空に向かって思索しつづけた芸術家の〈言葉〉を全収録する決定版。テクスト30篇、手帖と紙葉に記された未発表断片90篇、対話7篇。作品、デッサンなども多数収載。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (1994/7/1)
- 発売日 : 1994/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 455ページ
- ISBN-10 : 4622043882
- ISBN-13 : 978-4622043881
- Amazon 売れ筋ランキング: - 972,102位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,584位フランス文学研究
- - 3,144位その他の外国文学研究関連書籍
- - 51,138位アート・建築・デザイン (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年1月17日に日本でレビュー済み
ジャコメッティ本人が手帳などに残した思想・思索・イメージの断片を、デッサンやスケッチも含め細大漏らさず収録した貴重な本書、探求の手がかりとして、あるいは辿った道の目印としてそのつど書き付けられた言葉は時に曖昧模糊として余人の立ち入りがたいイメージも少なくないが、その分ジャコメッティという探求者の足跡が非常に近しく感じられる。巻末に収録された対話集もまたジャコメッティのものの見方をより客観的に自身の口から引き出した、興味深い記録。特にジョルジュ・シャルボニエの容赦のないインタビューを前にジャコメッティが饒舌に語る様は、彼の作品の秘密を解く上で重要なキーワードがいくつも提示され、引き込まれる。
2006年8月30日に日本でレビュー済み
今年の夏、息子から誕生日に送ってもらったこの本「エクリ」は、矢内原氏による名著「ジャコメッティ」に飽きることなく心打たれ続けた愚父に対する更なる叱咤激励の意味が込められていました。「エクリ」はジャコメッティ本人による寄稿や手紙を纏めたものです。この激しさは何なのだろう?一読直後の感想です。初期のシュールから中晩年の写実に至るまでのほぼ全時代の貴重な思考の記録。その時々の思索と現出する彼の作品がきっちりリンクしていたことが確認出来ました。自筆の資料も数多く、手紙などのノート部とデザイン画の配置が美しく整っていて感心しました。文章も達者な人で全体は文学的で特に少年時代を扱うものは詩的で美しい。もう一度「この激しさは何だろう?」・・なぜジャコメッティは芸術家なのか?彼の24時間は24時間中「芸術」と共にあったということ・・それを目の当たりにした一般読者である私は「激しさ」を感じるのでしょう。