「中盆」(なかぼん)とは博打場での差配をする人のことだが、相撲界では八百長相撲の仲介・工作人のことを指す。著者はこの中盆として活躍した元小結で、2000年1月に外国特派員協会で相撲界の八百長を告発する記者会見を行って有名になった。本書はそのような告発を受けてもはっきりした対応を取らない相撲界を挑発する告発・暴露本で、『週刊ポスト』上で行われてきた告発キャンペーンの一環と考えられる。
とりあえず、ゴーストライターの腕が良い(「あとがき」には鵜飼克郎という人の名前が記されている)。プロのきっちりした仕事を見せてもらったという感じだ。
私は大相撲には興味がないので、本書に記されていることの意味と重大性をはっきりと理解できたという自信はない。まあそういう人間が興味深いと思った点を以下にいくつか。
フルコンタクトの格闘技で八百長でない「ガチンコ」を行って、それを商業的に成功させるのは非常に難しいというのが、一般に言われていることだろう。試合の間隔をあけなくてはならないので頻繁に興行を打てない、そして選手の寿命が短くなるという理由がある。私は本書を読んで、大相撲という競技は非常に安定したインフラストラクチャを持っているがゆえにガチンコがしやすいんだなあという、本書が言おうとしていることとは逆の印象を抱いてしまった。もう失うものがない著者でさえ、本人が活躍していた時期にもかなりの試合がガチンコであったと書いているし、自分が引退した後はむしろガチンコが主流派を形成していると認めている。
本書では、大相撲における八百長がどのようなロジックに基づいて行われるかが細かく書かれていて面白い。ここで描かれているのは、個々の力士がそれぞれの思惑をもとに、それぞれの利益を最大化するために取引を行うというきわめて市場主義的なゲームであり、モデル化したくなってしまった人も多いんではなかろうか。また、「いくら八百長でも、実力がないと勝てない」というロジック(プロレスの世界ではこれだけに頼ることになる)が、大相撲の世界でいかに成り立っているかという分析が興味深い。この部分の分析はきわめて冷徹かつ知性的。もちろんゲームへの参加者はこうした具体的なロジックをしっかりと理解しているのだろうけれども、大相撲というインフラストラクチャの持つ複雑さと豊かさが、適度に複雑なゲーム・ルールを生成させていて、実に面白かった。プロレスの八百長よりも分析の対象としてずっと豊かなんではないかと思う。
2000/8/26

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中盆: 私が見続けた国技・大相撲の深奥 単行本 – 2000/7/1
板井 圭介
(著)
- 本の長さ252ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2000/7/1
- ISBN-104093795460
- ISBN-13978-4093795463
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
相撲界では、八百長相撲の仲介・工作人を「中盆」という。史上最速出世力士は、いかにして、角界の汚れ役に転落していったのか。閉ざされた角界の実態を明かす。
登録情報
- 出版社 : 小学館 (2000/7/1)
- 発売日 : 2000/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 252ページ
- ISBN-10 : 4093795460
- ISBN-13 : 978-4093795463
- Amazon 売れ筋ランキング: - 439,007位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 12,313位スポーツ (本)
- - 37,682位エンターテイメント (本)
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2018年9月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
先日亡くなった板井の著書である。
板井と言えば大相撲の八百長を告発した人、という見方をされる事がほとんどだが、
板井はこの本で力士の大麻吸引、相撲賭博や野球賭博の事実も暴露していた事に触れる人は少ない。
後の角界のスキャンダルを見事に予言していたのだ。
八百長に関しても、力士が携帯のメールで打ち合わせをしていた事実が報道され、板井の主張を見事に
裏付けている。
そういう事実に鑑みれば、板井はもっと評価されてもいいと思う。
告発の動機が何であっても。
板井と言えば大相撲の八百長を告発した人、という見方をされる事がほとんどだが、
板井はこの本で力士の大麻吸引、相撲賭博や野球賭博の事実も暴露していた事に触れる人は少ない。
後の角界のスキャンダルを見事に予言していたのだ。
八百長に関しても、力士が携帯のメールで打ち合わせをしていた事実が報道され、板井の主張を見事に
裏付けている。
そういう事実に鑑みれば、板井はもっと評価されてもいいと思う。
告発の動機が何であっても。
2017年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アラフォーの自分が、相当面白う読めました。ちなみに、嫁父にも渡しました。
相当面白いようです。
千代の富士、北の海、などなど・・・
既にお亡くなりになられた、歴戦の猛者たちの当時の姿がよくわかります。
まぁ、今もかわらないのでしょーがね・・・
相当面白いようです。
千代の富士、北の海、などなど・・・
既にお亡くなりになられた、歴戦の猛者たちの当時の姿がよくわかります。
まぁ、今もかわらないのでしょーがね・・・
2019年8月6日に日本でレビュー済み
以前は入手困難だったが今は非常に手頃な値段で中古本として買えるようになった「八百長―相撲協会一刀両断 元大鳴戸親方 (著)」を読んでからこの本を購入することを勧める。それはやはり時系列的に頭により入りやすくなるためだ。板井氏の著書は八百長相撲の仕組みを非常に論理的に説明してあるので大変参考になり、書籍としての価値は高い。この2冊を読めば大相撲の見方がガラリと変わり更に興味深くなるだろう。かつて石原慎太郎が「大相撲は八百長だ」と公に言っていたがそれは全くの真実だった。それに一切染まらずガチ相撲をつき通し横綱に登りつめ生涯22度も優勝した貴乃花は実は史上最高の力士だったのではないか? 白鵬は実力はあっても千代の富士同様八百長で優勝した数の方が圧倒的に多いだろうな。モンゴル力士はほとんどがグルになって星の回し合いをやってるんだろう。親方連中が八百長の常連だったのを知っているから白鵬なんかは奴らの足元を見て不遜な態度で偉そうにしているということ。
2005年5月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
相撲嫌いな人はここを読まないでしょうが、なんとなく相撲を見はじめたり、昔ちょっと見ていた人に薦めたい一冊。
相撲の勝ち負けがプロレスみたいに決まっている?
優勝する力士は10日目過ぎると実はわかっちゃう?
こんな時期があったことを教えてくれます。そして、今でもあるということを教えてくれます。
八百長だからつまらないわけではないことは、プロレスを見ればわかること。
ではどうすればいいか?正確に判断できる「眼」を養うことです。
これを読むだけで、リアルな格闘技としての相撲がわかり、その結果として怪しい一番がわかるようになります。それも含めてそれはそれこれはこれで楽しめます。八百長でも、さあどんな展開で楽しませてくれるのかと思えるし、ガチンコならハラハラドキドキそのままです。
ずっとリアルファイト、ずっとストーリーどおりでなく、グレーで混ざり合うからこそこんなにも相撲は面白い!
相撲の勝ち負けがプロレスみたいに決まっている?
優勝する力士は10日目過ぎると実はわかっちゃう?
こんな時期があったことを教えてくれます。そして、今でもあるということを教えてくれます。
八百長だからつまらないわけではないことは、プロレスを見ればわかること。
ではどうすればいいか?正確に判断できる「眼」を養うことです。
これを読むだけで、リアルな格闘技としての相撲がわかり、その結果として怪しい一番がわかるようになります。それも含めてそれはそれこれはこれで楽しめます。八百長でも、さあどんな展開で楽しませてくれるのかと思えるし、ガチンコならハラハラドキドキそのままです。
ずっとリアルファイト、ずっとストーリーどおりでなく、グレーで混ざり合うからこそこんなにも相撲は面白い!
2018年6月5日に日本でレビュー済み
この前の角界スキャンダルはえらく長引いた。そんな中、思うところがあり書架から『中盆』(板井圭介/2000年/小学館)を抜いてきて再読。
「中盆(なかぼん)」とは、八百長相撲の仲介・工作人のことを指す相撲界の隠語。この本でもっとも重要な箇所は、「戦後最大の中盆」と呼ばれた元小結・板井が、千代の富士の53連勝の全取組を、当事者として八百長34番・ガチンコ19番に仕分けする章だ。ちなみに八百長の内、2番は板井自身の取組。この出来事は1988年の五月場所から十一月場所までに渡って展開された。約30年前ってことに軽く驚く。
今は便利な時代で、「千代の富士 53連勝」とネットで検索をすればサクっとダイジェスト動画を見ることができる。再読の理由はコレで、「見る側がヤオかガチかわかっていたら、それを見分けられるんだろうか?」ということなのだった。で、該当頁を開きながら、動画で53試合を確認する。
結果、うーん、言われてみればなんとなくわざと負けているように見えなくもなく、ガチはたしかにヤオに比べると長いのが多くて結果も際どいように思えなくもない、みたいな、断言には程遠いものになった次第。たぶんそれは「全部ヤオ」「全部ガチ」ではなく、混ざってるからよけいに分かりにくいのだろうなあと。素人には真実はわからない。だがすくなくとも、「相撲をやる側」はヤオ・ガチはわかってしまうように思う。
そして、更新は無いだろうと思っていたこの記録は、2010年、22年ぶりに大きく更新される。白鵬の63連勝。ただ、凄い!みたいな熱い想いはなく、あ、更新したんだ、みたいな日常の一コマみたいなものしか抱かなかった。『中盆』以降そういう視点で大相撲を眺めていたんだな私はと、今気づいた。
そして翌年の2011年、大相撲八百長問題が大々的に発覚。更にその6年後、白鵬がボスである「同郷飲み会」で起きたのが今回のスキャンダルで、日馬富士の師匠の伊勢ヶ濱親方は、かの53連勝のヤオの取組の内、4番を担当したと『中盆』には書かれている。素人には真実はわからない。
「中盆(なかぼん)」とは、八百長相撲の仲介・工作人のことを指す相撲界の隠語。この本でもっとも重要な箇所は、「戦後最大の中盆」と呼ばれた元小結・板井が、千代の富士の53連勝の全取組を、当事者として八百長34番・ガチンコ19番に仕分けする章だ。ちなみに八百長の内、2番は板井自身の取組。この出来事は1988年の五月場所から十一月場所までに渡って展開された。約30年前ってことに軽く驚く。
今は便利な時代で、「千代の富士 53連勝」とネットで検索をすればサクっとダイジェスト動画を見ることができる。再読の理由はコレで、「見る側がヤオかガチかわかっていたら、それを見分けられるんだろうか?」ということなのだった。で、該当頁を開きながら、動画で53試合を確認する。
結果、うーん、言われてみればなんとなくわざと負けているように見えなくもなく、ガチはたしかにヤオに比べると長いのが多くて結果も際どいように思えなくもない、みたいな、断言には程遠いものになった次第。たぶんそれは「全部ヤオ」「全部ガチ」ではなく、混ざってるからよけいに分かりにくいのだろうなあと。素人には真実はわからない。だがすくなくとも、「相撲をやる側」はヤオ・ガチはわかってしまうように思う。
そして、更新は無いだろうと思っていたこの記録は、2010年、22年ぶりに大きく更新される。白鵬の63連勝。ただ、凄い!みたいな熱い想いはなく、あ、更新したんだ、みたいな日常の一コマみたいなものしか抱かなかった。『中盆』以降そういう視点で大相撲を眺めていたんだな私はと、今気づいた。
そして翌年の2011年、大相撲八百長問題が大々的に発覚。更にその6年後、白鵬がボスである「同郷飲み会」で起きたのが今回のスキャンダルで、日馬富士の師匠の伊勢ヶ濱親方は、かの53連勝のヤオの取組の内、4番を担当したと『中盆』には書かれている。素人には真実はわからない。
2004年6月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
引退力士がよく出すタイプの(往々にして時間とお金の無駄になってしまうだけの)美化自伝を読むくらいならいっそこの本を読んだ方がいいかも、と思ってしまいました。当事者でなければ知りえない当時の相撲界の現実がよく書かれていると思います。説得力(と筆力)のある一冊だと思いました。相撲を見るときの新しい見方と問題意識を与えてくれるかもしれません。
2010年8月7日に日本でレビュー済み
本の中で板井自身が自分は平気で嘘をつく人間であると認めてしまってるので、実際 会見で彼は曙に対して負けてあげましたと言っているが本の中では自分から売りに行ったと書いてある。
大体真実なんだろうけどドーピングと同じで悪いのは協会ではなく力士なんだよね。
とにかく汚いというかずる賢いというか、本人がそのことを認めてしまってるのがよけいずうずうしいというか。
板井はやりたい放題悪さをやって首になったんだから自業自得、っていうかもっと早く首にしてれば協会は悪くならなかったと思う。
ガチンコ力士の貴闘力が解雇されたのは非常に残念。
この本を読んだ人は合わせて元大鳴門親方の八百長を読むといいでしょう。
ps 18.9.5
千代の富士も板井も死んだのね。
板井は若乃花のガチンコって本では若乃花には八百長やってでも残って欲しかったとか予想通りの無反省振りを発揮してるし、
俺が読んだ自伝の作者の中で最低の人間だったな。
親方と一緒にいるのが嫌で好きでもない女を孕ませ、八百長の証拠のテープといいながらそれは親方が八百長をしないようにと
力士達に説教してるテープであり当の板井は全く聞かず八百長をし続ける。
会見で申し訳ないと思ってますと言ったが当然それも嘘なことはガチンコって本で分かるしね。
この男に正しく生きるという選択はないのだろう。
大体真実なんだろうけどドーピングと同じで悪いのは協会ではなく力士なんだよね。
とにかく汚いというかずる賢いというか、本人がそのことを認めてしまってるのがよけいずうずうしいというか。
板井はやりたい放題悪さをやって首になったんだから自業自得、っていうかもっと早く首にしてれば協会は悪くならなかったと思う。
ガチンコ力士の貴闘力が解雇されたのは非常に残念。
この本を読んだ人は合わせて元大鳴門親方の八百長を読むといいでしょう。
ps 18.9.5
千代の富士も板井も死んだのね。
板井は若乃花のガチンコって本では若乃花には八百長やってでも残って欲しかったとか予想通りの無反省振りを発揮してるし、
俺が読んだ自伝の作者の中で最低の人間だったな。
親方と一緒にいるのが嫌で好きでもない女を孕ませ、八百長の証拠のテープといいながらそれは親方が八百長をしないようにと
力士達に説教してるテープであり当の板井は全く聞かず八百長をし続ける。
会見で申し訳ないと思ってますと言ったが当然それも嘘なことはガチンコって本で分かるしね。
この男に正しく生きるという選択はないのだろう。