典型的な 歴史改竄小説 レン・ディトン SS-GBと同じように
第2次大戦後の英国を舞台にしている 設定はダンケルク撤退 バトルオブブリテン
の後にナチスドイツ副総統 ルドルフ・ヘスが英国に飛び和平講和が締結されて
英国が 徐々にファシズムに傾斜していくという歴史背景
物語は主人公ピーター・カーマイケル ロンドン警視庁警部補
と事件の当事者の女性が其々入れ替わりに語るという形式
貴族の館で 有力な国会議員が殺されその胸にはユダヤの星
が置かれている
捜査の指揮を執る カーマイケル警部補一見単純なテロ事件
とも思われ証拠は 貴族の娘ルーシーの夫ユダヤ人の銀行家
ディヴィッド・カーンの犯行を示す
或る手掛かりを頼りに 捜査を進めたカーマイケルは巨大な陰謀により
この暗殺が仕組まれたことを 解明する
殺人事件の謎解きと並行して当時の英国上流階級の生活を中心に
英国が徐々にファシズムに犯されてゆく過程が描かれている
歴史改変小説と推理小説を 巧みに組み合わせた
中々の 傑作小説と思える

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英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ウ 21-1 ファージング 1) 文庫 – 2010/6/10
1949年、英国とナチスが講和条約を結んだ世界。和平に尽力した権力者の館で、議員の不可解な死体が発見された……。壮大な歴史改変エンターテイメント三部作、第一弾登場!
- 本の長さ464ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2010/6/10
- ISBN-104488279058
- ISBN-13978-4488279059
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2010/6/10)
- 発売日 : 2010/6/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 464ページ
- ISBN-10 : 4488279058
- ISBN-13 : 978-4488279059
- Amazon 売れ筋ランキング: - 650,861位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,264位創元推理文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2021年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
おそらく翻訳家さんは、ブルーベルの花をご存知でなく、植物の名にも疎く、ブルーベリーを花の名だと勘違いされているのでしょう。
ですが、この言葉が出てくるどのシーンを取っても、ブルーベルの花について語っているとしか読めません。そもそも両者は見た目も、その姿からイメージされるものも、全く違います。
些細な翻訳の間違いに目くじら立てなくても…と言われるかも知れませんが、全然些細な事ではないのですよ、これが。
5月初頭の英国田園地帯を代表するものの一つが、森林の樹々の足元を彩り、青空を地に映したかの如くに美しいブルーベルの絨毯です。
主人公カーマイケルの登場シーンで、彼の目を通してこの、一年のほんの一時期しか見られない天国のような光景が描写されることで、物語の進行につれて徐々に大きくなってゆくファシズムの影が、読者の頭の中でより不気味に、より暗く対比されることになるのです。
その大切な花の名を、それも何度も何度も、最後まで間違えては、著者の意図をすっかり台無しにするようなものです。私が著者だったら、マジ怒ります!
なので、物語は面白かったけど、星一つ減点。
ですが、この言葉が出てくるどのシーンを取っても、ブルーベルの花について語っているとしか読めません。そもそも両者は見た目も、その姿からイメージされるものも、全く違います。
些細な翻訳の間違いに目くじら立てなくても…と言われるかも知れませんが、全然些細な事ではないのですよ、これが。
5月初頭の英国田園地帯を代表するものの一つが、森林の樹々の足元を彩り、青空を地に映したかの如くに美しいブルーベルの絨毯です。
主人公カーマイケルの登場シーンで、彼の目を通してこの、一年のほんの一時期しか見られない天国のような光景が描写されることで、物語の進行につれて徐々に大きくなってゆくファシズムの影が、読者の頭の中でより不気味に、より暗く対比されることになるのです。
その大切な花の名を、それも何度も何度も、最後まで間違えては、著者の意図をすっかり台無しにするようなものです。私が著者だったら、マジ怒ります!
なので、物語は面白かったけど、星一つ減点。
2011年1月18日に日本でレビュー済み
週刊文春で紹介されていたため、購入。
読後、既読の別の小説の作者であることも知りました。
「優れた作品は世に伝わるんだな」、というのが率直な感想です。
結末まで丁寧に読めば、非常に満足できることは保証できます。
ifの歴史を取り扱った小説ではありますが、それが面白いポイントではありません。
まず、丁寧な舞台設定に人物造形があり、読み進めていくうちに
登場人物を人間として「好き」或いは「嫌い」と感じている自分に気づきます。
導入部分は冗長な程ですが、丁寧で淡々とした描写の中、
ライトノベルとは異なり、文章がしっかりとしている本作ではギリギリ退屈せず、
自然と物語の世界に入っていくのですね。
だから物語が一気にクライマックスに入ると、これまで見えていたものが
今までと異なった様相を呈し始めている事に気づきます。
平和でつまらない生活の裏に潜んでいる物、
それを知ってしまえば今までの生活には戻れなくなる。
善を為すのも悪を為すのも神ではなく人間であり、
その決断が未来に続いているのだ、ということがみえてくる。
作者の冴えきった手腕を感じることができるのが本作です。
9割は単調かもしれませんが、最後の1割にきちんと全てが精算されます。
いわゆる推理小説のジャンルというよりは、謎解きがドンデン返しに繋がる。
そんな作品であるといえます。
面白い小説を探している方は、是非読まれてはいかがでしょうか?
読後、既読の別の小説の作者であることも知りました。
「優れた作品は世に伝わるんだな」、というのが率直な感想です。
結末まで丁寧に読めば、非常に満足できることは保証できます。
ifの歴史を取り扱った小説ではありますが、それが面白いポイントではありません。
まず、丁寧な舞台設定に人物造形があり、読み進めていくうちに
登場人物を人間として「好き」或いは「嫌い」と感じている自分に気づきます。
導入部分は冗長な程ですが、丁寧で淡々とした描写の中、
ライトノベルとは異なり、文章がしっかりとしている本作ではギリギリ退屈せず、
自然と物語の世界に入っていくのですね。
だから物語が一気にクライマックスに入ると、これまで見えていたものが
今までと異なった様相を呈し始めている事に気づきます。
平和でつまらない生活の裏に潜んでいる物、
それを知ってしまえば今までの生活には戻れなくなる。
善を為すのも悪を為すのも神ではなく人間であり、
その決断が未来に続いているのだ、ということがみえてくる。
作者の冴えきった手腕を感じることができるのが本作です。
9割は単調かもしれませんが、最後の1割にきちんと全てが精算されます。
いわゆる推理小説のジャンルというよりは、謎解きがドンデン返しに繋がる。
そんな作品であるといえます。
面白い小説を探している方は、是非読まれてはいかがでしょうか?
2010年8月31日に日本でレビュー済み
第二次世界大戦のときにナチスドイツとの和平を選んだイギリスを舞台に、その講和条約を締結した立役者である下院議員の殺人事件を描く。
一見、歴史改変的設定の本格推理小説の装いをしてはいるが、実は、もっと深い。ナチとの和平という選択をしたイギリスが、どのようにファシズムに染まっていくのか、ユダヤ人迫害へと進んでいくのか、という有り得べき歴史の壮大な思考実験の感がある。
ミステリとしてはあまり謎解きの要素はなく、物足りないし、事件の結末は納得がいかないところもあるだろうが、むしろ、この小説が単なるミステリにとどまらない証左でもある。
著者の描写には、著者自身の政治的信条、歴史観も見え隠れするが、それに対して、賛成する人でなくても、どのようにして、私たち民衆は、自ら進んでファシズムに取り込まれていくのかという点について、深く考えさせられるだろう。
作中でジョージ・オーウェルと思しき作者の『1974』という小説も題名だけだが出てきて、この小説、おそらくはこの三部作がディストピア小説として描かれていることの象徴のように感じた。
舞台であるイギリスの歴史や人物について、もう少し知識があれば、もっと楽しめたと思うが、幸い、詳しい訳注もついているので、参考にしながら読んだ。
主人公であるスコットランドヤードのカーマイケル警部補も魅力的に描かれている。
一見、歴史改変的設定の本格推理小説の装いをしてはいるが、実は、もっと深い。ナチとの和平という選択をしたイギリスが、どのようにファシズムに染まっていくのか、ユダヤ人迫害へと進んでいくのか、という有り得べき歴史の壮大な思考実験の感がある。
ミステリとしてはあまり謎解きの要素はなく、物足りないし、事件の結末は納得がいかないところもあるだろうが、むしろ、この小説が単なるミステリにとどまらない証左でもある。
著者の描写には、著者自身の政治的信条、歴史観も見え隠れするが、それに対して、賛成する人でなくても、どのようにして、私たち民衆は、自ら進んでファシズムに取り込まれていくのかという点について、深く考えさせられるだろう。
作中でジョージ・オーウェルと思しき作者の『1974』という小説も題名だけだが出てきて、この小説、おそらくはこの三部作がディストピア小説として描かれていることの象徴のように感じた。
舞台であるイギリスの歴史や人物について、もう少し知識があれば、もっと楽しめたと思うが、幸い、詳しい訳注もついているので、参考にしながら読んだ。
主人公であるスコットランドヤードのカーマイケル警部補も魅力的に描かれている。
2018年2月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
歴史改変の傑作との噂の三部作。450ページ、長大な序章といったところ。個人的には200ページくらいまでは退屈で、何回も読むのをやめようかと思いながら我慢して読んだ。中盤くらいからようやく歴史改変の匂いがぷんぷんしてきて、おもしろくなる感じ。次作が楽しみになってきた。
2011年1月7日に日本でレビュー済み
’00年にファンタジー小説で作家デビューした、英国ウェールズ出身でカナダ在住のジョー・ウォルトン女史による、ナチス・ドイツと講和を結んだ英国を舞台にした、歴史改変エンターテインメント3部作の第1弾。
’10年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門で3部作まとめて第2位、「このミステリーがすごい!」海外編で第10位。講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で「総合」同点第4位、「作家が選んだ」部門第9位、「翻訳家&評論家が選んだ」部門同点第4位にランクインしている。
1949年、英国は政治家および政界の有力者、軍人、大資本家、社交界で有名な貴族からなる“ファージング・セット”と呼ばれる一大派閥の導きで、ナチス・ドイツと単独講和を結んで8年。この年の5月、そんな派閥の中心メンバーの内輪のパーティーが南イングランドのハンプシャーの田園地帯にある、資産家で子爵・貴族院議員の広壮な邸宅で催されていたが、和平に尽力した下院議員が変死体で発見される。
物語は、その邸宅の令嬢だったが、家族の反対を押し切ってユダヤ人の銀行家と結婚し、パーティーに招かれて里帰りしているルーシーの一人称叙述と、ロンドンからやってきて事件の捜査をするスコットランドヤードのカーマイケル警部補の三人称叙述が、ほぼ同じタイミングで交錯しながら進行してゆく。
ベースは、黄金期の本格パズラーを彷彿させるフーダニットだが、並行世界ならではの英国の、「ユダヤ人差別」「共産主義の弾圧」「国民の自由に対する制約」「ファシズムへの道」などが、‘わたし’ことルーシーの身の回りの述懐からより身近にひしひしと伝わってくる。一方で真相にたどりつきながらも権力の壁に突き当たり、忸怩たる思いをするカーマイケルの苦悩も、この設定ゆえのことである。この物語の救いは、折り合いがつけられない“旧弊な家族”と“ファッショ化する英国”とに見切りをつけ、夫との新しい世界を築いてゆこうと船出する‘わたし’だといえよう。
ともあれ、この、読みやすいながらも深みのある壮大な物語絵巻は、一人称のヒロインを替えて、第2部『暗殺のハムレット』へと続く。
’10年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門で3部作まとめて第2位、「このミステリーがすごい!」海外編で第10位。講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で「総合」同点第4位、「作家が選んだ」部門第9位、「翻訳家&評論家が選んだ」部門同点第4位にランクインしている。
1949年、英国は政治家および政界の有力者、軍人、大資本家、社交界で有名な貴族からなる“ファージング・セット”と呼ばれる一大派閥の導きで、ナチス・ドイツと単独講和を結んで8年。この年の5月、そんな派閥の中心メンバーの内輪のパーティーが南イングランドのハンプシャーの田園地帯にある、資産家で子爵・貴族院議員の広壮な邸宅で催されていたが、和平に尽力した下院議員が変死体で発見される。
物語は、その邸宅の令嬢だったが、家族の反対を押し切ってユダヤ人の銀行家と結婚し、パーティーに招かれて里帰りしているルーシーの一人称叙述と、ロンドンからやってきて事件の捜査をするスコットランドヤードのカーマイケル警部補の三人称叙述が、ほぼ同じタイミングで交錯しながら進行してゆく。
ベースは、黄金期の本格パズラーを彷彿させるフーダニットだが、並行世界ならではの英国の、「ユダヤ人差別」「共産主義の弾圧」「国民の自由に対する制約」「ファシズムへの道」などが、‘わたし’ことルーシーの身の回りの述懐からより身近にひしひしと伝わってくる。一方で真相にたどりつきながらも権力の壁に突き当たり、忸怩たる思いをするカーマイケルの苦悩も、この設定ゆえのことである。この物語の救いは、折り合いがつけられない“旧弊な家族”と“ファッショ化する英国”とに見切りをつけ、夫との新しい世界を築いてゆこうと船出する‘わたし’だといえよう。
ともあれ、この、読みやすいながらも深みのある壮大な物語絵巻は、一人称のヒロインを替えて、第2部『暗殺のハムレット』へと続く。
2013年7月23日に日本でレビュー済み
英国が第二次世界大戦中にナチスと同盟を結ぶという歴史改変小説である。その英国政権の中枢にいるファージング一派で起きた殺人事件。それを追うスコトランドヤーズの
刑事カーライル。英国伝統の推理小説かと思いきや、最後の落ちは読んでるものの消化不良を間違いなく引き起こす結果となる。三部作らしいが、どうも第二話以降
でもこの結果が覆ることはなさそうだ。歴史が改変されていることからくる居心地の悪さと結末の消化不良で正直読んで損した作品。
刑事カーライル。英国伝統の推理小説かと思いきや、最後の落ちは読んでるものの消化不良を間違いなく引き起こす結果となる。三部作らしいが、どうも第二話以降
でもこの結果が覆ることはなさそうだ。歴史が改変されていることからくる居心地の悪さと結末の消化不良で正直読んで損した作品。
2010年10月22日に日本でレビュー済み
ファシズムへの前奏曲――それは、初夏のイギリス南部の美しい田園風景の中で、静かに奏でられ始めます。いや、本当はもっと前からあちこちで奏でられ始めていたのですが殆どの人は気付かず、架空の1949年5月、後に親独派が権力を掌握する最終段階で行なったと判明する或る殺人事件が某大邸宅で起きます。最初はそこの主人や泊りのパーティー客や使用人達からの聴取がポワロ物っぽい雰囲気で行われ、当然読者は真犯人は誰だ?と気が急きますが、これは推理小説の形を取ってるものの、意外な犯人捜しや巧妙なトリックetc.を楽しむのがメインの軽い娯楽小説ではありませんので、念のため。
小説の構成は、事件の舞台となった大邸宅が実家の女性と、スコットランドヤード警部補の視点で、交互に語られる形を取っています。(もっと詳しく述べると、前者は一人称による回想、後者は警部補を主人公とした現在進行中の物語。)この巧みな作りは、忍び寄るファシズムの気配や、気が付いた時には手遅れとなる恐さを、効果的に表しています。
読了後、ドイツのニーメラー牧師の有名な次の一節、「最初彼等はユダヤ人を連行しに来たが、私はユダヤ人ではないので声高に反対しなかった。次に彼等は共産主義者を連行しに来たが、私は共産主義者ではないので声高に反対しなかった。それから彼等は労働組合員を連行しに来たが、私は労働組合員ではないので声高に反対しなかった。そして彼等は私を連行しに来たが、その時にはもう、私のために声高に反対してくれる人は一人も残っていなかった。」を思い出しました。仮に、この小説で描かれているようにイギリスがドイツと講和条約を結び、植民地は温存され、アフリカのフランス領も英独で分け、米国参戦がなければ、21世紀の今、巨大な米国はなく、斜陽とは言えまだまだ大英帝国はパワフルだったのでしょうか。しかし、ジョンブル魂はどこへ行った?、という事になったでしょうね。イギリスとドイツが手を結んだ場合、ドイツがイギリス化する可能性はなく、イギリスはドイツ化(全体主義化)の方向へ行くのが、リアル且つ無気味。――現実に起きた歴史は一つですが、それ以外の可能性について色々考えさせられました。
全ての方にお勧めしたい本です。そして、これはまだ導入部ですので、是非次の第二部に進んで頂きたいと思います。
(映画『日の名残り』などが好みの方には、特に。ディテールが丁寧に描き込まれているので、風景や大邸宅の様子から衣装・ティーカップに至るまでよく出来た映画を鑑賞しているかのように楽しめました。)
最後に、素晴らしい翻訳である事を付け加えておきます。
小説の構成は、事件の舞台となった大邸宅が実家の女性と、スコットランドヤード警部補の視点で、交互に語られる形を取っています。(もっと詳しく述べると、前者は一人称による回想、後者は警部補を主人公とした現在進行中の物語。)この巧みな作りは、忍び寄るファシズムの気配や、気が付いた時には手遅れとなる恐さを、効果的に表しています。
読了後、ドイツのニーメラー牧師の有名な次の一節、「最初彼等はユダヤ人を連行しに来たが、私はユダヤ人ではないので声高に反対しなかった。次に彼等は共産主義者を連行しに来たが、私は共産主義者ではないので声高に反対しなかった。それから彼等は労働組合員を連行しに来たが、私は労働組合員ではないので声高に反対しなかった。そして彼等は私を連行しに来たが、その時にはもう、私のために声高に反対してくれる人は一人も残っていなかった。」を思い出しました。仮に、この小説で描かれているようにイギリスがドイツと講和条約を結び、植民地は温存され、アフリカのフランス領も英独で分け、米国参戦がなければ、21世紀の今、巨大な米国はなく、斜陽とは言えまだまだ大英帝国はパワフルだったのでしょうか。しかし、ジョンブル魂はどこへ行った?、という事になったでしょうね。イギリスとドイツが手を結んだ場合、ドイツがイギリス化する可能性はなく、イギリスはドイツ化(全体主義化)の方向へ行くのが、リアル且つ無気味。――現実に起きた歴史は一つですが、それ以外の可能性について色々考えさせられました。
全ての方にお勧めしたい本です。そして、これはまだ導入部ですので、是非次の第二部に進んで頂きたいと思います。
(映画『日の名残り』などが好みの方には、特に。ディテールが丁寧に描き込まれているので、風景や大邸宅の様子から衣装・ティーカップに至るまでよく出来た映画を鑑賞しているかのように楽しめました。)
最後に、素晴らしい翻訳である事を付け加えておきます。