松本大洋の作品は初期作品を除き、全ての作品が胸に沁みこんできます。竹光侍も同様です。
日本の漫画家は良き作者が非常に多いですが、その中でも松本大洋には特に絶大な信頼を置くことができます。
彼の作品に外れはありません。全ての漫画が、面白い。
以下、ネタバレありです。
竹光侍は激しい獣性を内に秘める主人公が、最後に獣性を捨てることに成功して元鞘に収まるというストーリーではあるのですが
彼自身が内部での理性vs獣性の闘争に打ち克ったわけではないというのが印象的でした。
あくまで腕と刀を喪ったことが、獣性を捨て去ることができた最大の要因です。
これは「腕と一緒に獣性を切り落された」という宗教的あるいはファンタジーな見方も出来ますが
物理的に「獣性を解き放つ手段」そのものを喪ったから獣性が無くなったという見方も出来ます。
理性によって御するのは結局至難の業で、去勢に似た物理的な切除によって、ようやく獣性が減退・消滅する。
それほどまでに人の業を御するのは難しく、主人公ほどに高い理性を備えた人間でも、激しい獣性は抑えがたい。
そういった冷酷な現実を描かれているようにも見えます。
しかし裏を返せば、手段によっては自身の在り方を180度変えることは出来る、という考え方にも繋がります。
ちなみに今回アマゾンで購入したのは、引っ越しの際に8巻だけ紛失してしまったのが理由です。
お恥ずかしい限りです。
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